理事長ご挨拶

 当法人の沿革は1965年下荒田の地に開設された中村外科医院にまで遡ります。父である初代理事長の運営理念により当医療法人および関連社会福祉法人は療養型医療病棟、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、介護付有料老人ホームを擁するに至っており、広く慢性期医療から介護福祉サービスをカバーして参りました。

 現在日本の医療は他の諸外国に類を見ない急激なスピードで進行する高齢化社会と人口減少を背景に慢性的な医療従事スタッフ不足と医療経済資源の枯渇という2つの大きな問題を抱えている事は皆さんご存じのことと思います。この問題解決のために急性期から慢性期まで、入院から在宅ケアもしくは施設入所まで、すなわち医療から福祉に至る整合性のとれた効率的なシステムを再構築することが急務となっています。 厚生労働省は2000年施行の介護保険法をはじめとして、2005年施行の医療関連法案を通じ一貫して急性期病床と慢性期病床の機能分化を推し進め、急性期病床の平均入院期間を短縮化し急性期病床から回復期リハビリテーション病床、そして慢性期病床から在宅ケアシステムへの流れをスムーズにすべく各種の社会基盤を整備してきました。

 団塊世代がすべて65歳以上となり、高齢者医療がピークとなる来るべき2025年に向け、病院機能を高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4機能ごとに医療需要と病床必要量を地域ごとに調整するべく「地域医療構想」が策定中であり、それにより実現される「地域包括ケアシステム」を厚生労働省は目指しているように見受けられます。「地域包括ケアシステム」は公式に提起されたときは、介護中心で病院は含まれていませんでした。当時は、「地域包括ケアシステム」に含まれる医療は診療所・在宅医療に限定されていました。しかしながらその定義と範囲は徐々に拡大され、最近では200床未満の中小病院までを含むように変化しています。まさに当院のサイズであり、当院が理念の中で目指してきた「地域に密着したトータルで良質の医療・介護サービスを提供します」を実現化する絶好のタイミングであると考えています。そもそも、7:1看護基準に代表される重装備・高コスト体質の医療構造を、在宅に返すことにより医療費全体を圧縮することが「地域包括ケアシステム」の最大の目的だとすれば、当院のような地域密着の慢性期病院で高齢者の肺炎や心不全をはじめとした軽症急性期疾患を低コストで治療することは国策にもかなったことといえましょう。

 そのために、ケアの質を向上させることが近道と考え、看護ケアの質を上げることと医療チームの情報共有を目標に当院はまだ慢性期病院ではマイノリティであった電子カルテを12年前に導入しました。最近では各種IoT技術を用いて、ベッドサイドから直接生体情報を入力しリアルタイムな医療・看護が出来るシステムの構築、各種センサーやロボットを導入した生体情報モニターシステムの導入に取り組んでいます。
 また在宅復帰のためには、リハビリテーションは必須の技術ととらえ、リハビリテーション医療にも早期から取り組んでまいりました。最近ではTOYOTAと藤田医科大学が共同開発したリハビリ歩行ロボットウェルウォークWW-1000の導入や、高次脳機能障害を残した脳血管障害患者に対するHONDAドライビングシミュレータの導入などにも取り組み、日進月歩のIoT技術やAI等の進歩にもキャッチアップすべくアンテナを張り巡らしています。

 以上のような時代の流れに即しつつ、当病院は急性期治療を終えた(Post-acute)患者様と向き合い、地域に真に必要とされる良質な医療を提供する病院(Post-acute Therapy)を目指して回復期病棟と療養病棟を運営してまいりましたが、今年2019年秋、地域包括ケア病棟も新たに立ち上げ、さらに地域医療に貢献して行きたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

令和元年 7月吉日  理事長 中村浩一郎